ヘルニア治療チーム

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ヘルニア治療チームは、他院で治療不可能と診断された難治性腹壁瘢痕ヘルニアを含めた腹壁ヘルニアの外科治療の専門医チームです。可能な限り腹腔鏡を用いた低侵襲手術に努めております。

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ヘルニア治療チーム

体壁外科で扱う主な疾患は「鼠経ヘルニア」「大腿ヘルニア」「閉鎖孔ヘルニア」「へそヘルニア」「白線ヘルニア」「腹壁瘢痕ヘルニア」です.
ヘルニアとは臓器が本来あるべき場所から突出する病態をいいます.
一般的にヘルニアというと, 腰のヘルニア(椎間板ヘルニア)を思い浮かべることが多いと思いますがここでは腹壁から腸管などの腹腔内臓器が脱出する鼠径部・腹壁ヘルニアを説明します。
体壁とは, 腱膜や筋膜・筋肉や脂肪・皮膚で構成され腹膜に包まれた臓器を腹腔に留めておく働きがあります. 腹腔内は一定の温度, 一定の圧力に保たれており, 体壁はその一役を担います. また, 臓器を保護する役割もあります.

 

 

鼠経部ヘルニア

鼠径部とは?

脚の付け根のことです。鼠経靭帯を挟んで鼠経領域と大腿領域を含みます。

鼠径部ヘルニアの特徴と症状は?

いわゆる“脱腸”です。 鼠経ヘルニアと大腿ヘルニアを併せて鼠径部ヘルニアと呼称します。 初期症状として, 鼠径部の違和感や疼痛を伴う場合がありますが多くの人は鼠径部のふくらみで自覚します。 鼠経ヘルニアは圧倒的に男性に多いですが, 大腿ヘルニアは女性に多いです。 立ったりおなかに力を入れたときにふくらみ, 横になったり押さえたりすると引っ込むふくらみがあれば鼠径部ヘルニアである可能性が高いです。

放置しても良いか?

放置した場合, 脱出した臓器によってさまざまな症状が出現します。 腸管が浮腫や癒着により元の位置に戻らなくなる場合があります。 これを非還納状態と呼びます。 この中で,腸管に血流障害が生じているものと嵌頓と呼びます。 嵌頓状態を放置すると腸管壊死→腸管穿孔→腹膜炎となり命にかかわります。 腸管血流障害が無くても小腸閉塞や高度便秘を引き起こす可能性が高く。 嘔吐から誤嚥性肺炎発症のリスクもあるので早めの受診が必要です。
自然軽快することはまず無く, 増悪時には命にもかかわる可能性があるため非還納状態を認める場合は早めに受診しましょう。 力任せに押し込んだら腸に穴が開いてしまうことがありますので痛みを伴う場合や固くなっている場合には控えましょう。 嵌頓状態は専門的な手技で戻せる可能性があります。 その場合は準緊急的な手術を計画します。

早く手術しなくてもよいのか?

最も多い質問です。
基本的には疼痛などの症状が無く容易に還納できる場合には待機手術が可能です。 但しヘルニアのサイズや場所によっては疼痛がなくても早めの手術を提案することもあります。
待てる場合には, お仕事の都合や体調・大切な行事日程などを考慮して相談しながら手術スケジュールを組ませていただきます。
医学的に急ぐ必要がなくても, 症状により仕事や趣味・スポーツ等に支障を来しており早めの手術を希望される場合には, 可能な限り希望に沿った早い時期の手術スケジュールを組ませていただきます。

治療法は?

手術でのみ治療可能です。当科では前方到達法(鼠径部に切開を加えて行う手術)や腹膜外アプローチ:TEP・腹腔アプローチ:TAPP (おなかに小さな穴をあけて行う手術, 基本的に腹腔鏡を使用)のいずれかを提示しています。過去の手術歴にかかわらず, 主にTAPP/TEP法を提案します。嵌頓緊急症例や再発症例・一般的に難易度の高い泌尿器科手術後鼠経ヘルニアに対しては症例に応じて術式を検討し, 再発率ゼロを目指した根治的治療を行っています。

麻酔法は?

基本的にはすべて全身麻酔で行いますが, 前方到達法のみ部分麻酔や局所麻酔でも可能です。

 

 

閉鎖孔ヘルニア

閉鎖孔ヘルニアの特徴や症状は?

痩せた高齢女性に多いヘルニアです。 骨盤の閉鎖孔という場所にヘルニアを生じたものを閉鎖孔ヘルニアと呼びます。
専門的な知識があれば体表面から触れることは可能ですが基本的にはほかのヘルニアとは異なり体の一部が膨れるよう自覚症状はありません。 足の痛みや小腸閉塞に伴う嘔吐等, 一見関係がなさそうな症状が現れます。

診断方法は?

身体診察の他にCTや超音波で行います。 嵌頓症例の場合, 超音波検査は診断兼嵌頓解除手技にもなります。

治療法は?

基本的に閉鎖孔ヘルニアは診断がつけば全例手術を提案します。 条件を満たす場合には腸管嵌頓状態であっても超音波による腸管還納手技を行い, 一両日中の手術を計画しますが腸管壊死が疑われる場合や嵌頓状態が解除できない場合は緊急手術を行います。 腹腔鏡手術や開腹手術を, 全身状態や腹部手術歴等を踏まえて適宜提示いたします。

麻酔法は?

全身麻酔です。

 

 

へそヘルニア

へそヘルニアの特徴や症状は?

へそヘルニアは高齢者・肥満の方や肝硬変の方に多い疾患です。 臍部が腹圧や体位によって飛び出すことがある, あるいは常に飛び出している場合はへそヘルニアを疑います。 治療が必要です。

診断方法は?

身体診察や超音波検査で診断可能です。

治療法は?

手術でのみ治療可能です。治療法はヘルニアサイズによって異なります。肥満の方や肝硬変の方は正常に見える筋膜でも脆弱な場合が多く,ヘルニア門が小さくてもしっかりと修復しないと再発を繰り返すことがあります。場合によっては2cm以下の小ささヘルニアに対しても人工メッシュを使用することがあります。腹直筋が開いてしまっている場合(腹直筋離開)は腹壁再建が必要です。「出ているところだけ出なくしてほしい」といった希望もありますが,不十分な手術では後々,再発や新規のヘルニア発生リスクがあるので適切な治療を提示させていただきます。

臍部に人工メッシュを置いても大丈夫か?

臍部は腹部手術時に切開することが多い場所です。将来的に腹部手術の際、人工メッシュが邪魔にならないかとの不安がある場合には人工メッシュを用いない術式等別の選択肢も提示いたします

麻酔法は?

局所麻酔~全身麻酔です。当院では可能な限り苦痛の少ない全身麻酔を選択します。

 

 

白線ヘルニア

白線ヘルニアの特徴と症状は?

腹直筋の間にある白線と呼ばれる構造に何らかの原因で破綻をきたし、大抵の場合は腹膜前脂肪織が脱出しています。 症状としてはみぞおちとへその間にボコッとしたゴルフボール大の硬結を認め、同部位に痛みを自覚することがあります。 手で容易に触れることができる場所なため発見も早く,「腫瘍ではないか?」と心配して受診される方もいます。

診断方法は?

身体診察や超音波検査・CTで確実に診断可能です。

手術する必要はあるのか?

痛みを伴うことが多く、また、症状がある白線ヘルニアを5年間経過観察した場合、症状の増悪に伴い16%で手術を必要としたとの報告もあり、基本的には手術治療が望ましいです。

治療法は?

手術でのみ治療可能です。へそヘルニア同様に腹直筋離開を伴う場合にはヘルニアのサイズが小さくても腹壁再建に加えて人工メッシュで広く補強することが望ましいです。

麻酔法は?

全身麻酔です。

 

 

腹壁瘢痕ヘルニア

腹壁瘢痕ヘルニアの特徴と症状は?

腹壁瘢痕ヘルニア過去に腹部手術を行い、閉じた筋膜が再度開いて腹腔内臓器の脱出を認める状態です。
脱出臓器は皮膚や

皮下組織、肥厚した腹膜に包まれ体外に直接脱出することはまれですが術後早期の離開時あるいは感染が生じた場合には臓器が脱出する“腹壁破裂”となることがあります。

診断方法は?

身体所見で診断可能ですが皮下脂肪が厚い場合には超音波やCTを併用して確定診断を行います。

治療法は?

手術でのみ治療可能です。基本的にヘルニア門が3cmを超える場合には人工メッシュ使用が推奨されます。腹壁破壊が少なく、感染の軽減にもつながる腹腔鏡手術を第一選択としますがヘルニア門が10cmを超える場合には再発率の観点から開腹手術を選択します。また、感染や腸瘻形成創などの理由で人工メッシュ使用を避ける場合には形成外科との合同治療(植皮・大腿筋膜移植・皮弁・持続陰圧閉鎖療法・コンポーネントセパレーション法)による腹壁再建を計画します。ヘルニアのサイズや部位、術式によって手術難易度は大きく変化します。

経過観察できないか?

患者さんの全身状態と相談し、経過観察を選択することもありますが当院では基本的に全例手術を推奨します。非還納(脱出した腸がサイズや癒着などを理由に戻せなくなる)となることもあり、嵌頓(脱出した腸が戻せなくなり血流障害を来す)となった場合には緊急手術を要します。放置した場合、増大することはあっても自然軽快することはありません。

麻酔法は?

全身麻酔です。

 

 

さいごに・・・

ヘルニア患者さんの中には症状が軽いうちには羞恥心や煩わしさから受診を控え, 症状増悪に伴い運動や仕事に支障を来している方が多いです. また, 高齢者(特に介護が必要な方)の場合は生活や介護に悪影響を及ぼし, 腸脱出による便秘や腸閉塞等により誤嚥性肺炎や腸穿孔など重篤な疾患につながることもあります. ヘルニアは放置した場合, 増悪することはあっても自然軽快はしませんので, 決して放置してよい疾患ではないと考えます.

ヘルニアのサイズや患者さんの併存疾患リスク・年齢などを理由として医療機関で治療不可能と判断されることもありますが, 当院ではヘルニアサイズや部位に応じた様々な術式選択肢を有しており,高齢や併存疾患リスクを有する場合でも大学病院の特性を生かして専門診療科や多職種連携により全身管理を治療の一環として行い低い合併症率に繋げています.
特に超高齢者の方や心臓や肺が悪いことを理由として治療が難しいと判断された場合でも, 上記のような体制が整っている当院では治療できる可能性がありますので是非一度ご相談・ご紹介いただけましたら幸いです.

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