食道がんの治療について
食道がんとは?
60代以上の高齢者で男女比は約5:1と男性に多く,わが国では毎年約9,000人が食道がんにかかります。食道がんの発生要因としては、飲酒や喫煙、辛い飲食物の嗜好などが密接に関連するといわれています。解剖学的にリンパ節転移や隣接臓器(大動脈、気管支、肺など)への浸潤を起こしやすいことから、食道癌は胃癌や大腸癌などと比べるときわめて予後の悪い癌です。
食道がんの病期(ステ−ジ)
食道癌取扱い規約第12版(2022年)が国では「食道癌取扱い規約」に基づいて、腫瘍の深さ(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、他臓器(遠隔臓器や胸膜・腹膜)への転移の有無(M因子)に基づいて、がんの進行度を病期分類しています。この進行度に基づいて治療アルゴリズムに則った標準的な治療を中心に患者様に提供しています。
食道がんに対する各病期(ステ−ジ)別治療法
我が国での食道がん治療では手術が中心的な役割を果たしており、リンパ節郭清を伴う食道切除術が標準的手術と考えられています。身体に与える負担が非常に大きく難しい手術とされてきましたが、近年、
鏡視下手術の導入や術後管理などの進歩により手術による合併症の発生や死亡率は著しく減少しました。また手術の前後に再発を予防する目的で化学療法(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤)や放射線治療を併用した集学的治療を行うことで、食道がんの再発を抑制し根治を目指します。早期癌では内視鏡的治療や化学放射線療法により治癒することも期待できます。患者様の病状の進行具合や全身状態などに応じて最も適した治療法を一緒に相談した上で決めていくことになります。
手術療法
胸腔鏡下食道切除、縦隔リンパ節郭清術(ロボット支援胸腔鏡下食道切除再建術)
胸腔鏡と腹腔鏡を用いて食道と胸腹部のリンパ節の掃除を行う方法です。胸部に5~6箇所の小孔をあけ、
この小孔から内視鏡や手術器具を挿入してモニター画面を見ながら手術を行います。開胸手術と比べて傷が小さいため、術後の創痛が少なく、呼吸機能が保たれること、術後早期の離床が可能になるなど大きな利点があります。現在当院では手術支援ロボット“da Vinci Xi Surgical System(ダ・ヴィンチXi手術システム)を用いたロボット支援下手術に習熟した医師(消化器外科専門医・食道外科専門医・内視鏡外科学会技術認定取得医師・ロボット手術プロクター)が術者として年間10症例以上の患者様に実施するという施設基準を満たした上で、2023年4月からロボット支援下胸腔鏡下食道切除再建術を原則ほとんどの胸部食道癌症例を対象に保険診療として施行しています。ロボット手術では、先端が360度回転可能な関節機能を有する鉗子を用い、手振れ防止機能を有することや3次元拡大画像下に手術を行えるため、従来の鏡視下手術と比べても術者のストレスの少ない、より繊細な手術手技を実現することが可能です。
腹腔鏡補助下胃管作成・再建術
切除後の消化管再建法として、胃管(胃を管状に細くしたもの)や小腸などを頸部まで引き上げ、切離した頸部食道とつなぐ再建を行う必要があります。腹腔内を観察しながら腹部のリンパ節郭清と胃管の作成を行いますが、当科では主に腹腔鏡下手術もしくはロボット支援手術を活用し、質の高い手技を心がけて取り組んでいます。腹部の傷が小さいため創痛が少なく、術後早期に離床することができ、痰の喀出が容易になるという利点があります。手術時には消化管内に栄養補給用のチューブを挿入し、術後早期より栄養補給を行うことで栄養状態や創傷治癒をサポートします。また術後の食事摂取不良時の栄養補給に有用です。
生存率と切除不能進行・再発食道がんに対する治療
以上のように現状では外科療法が主な治療法であり、その治療成績(5年生存率:治療開始後5年間生存している割合)は近年向上しています。しかし、進行食道がんの患者さんに限定すると手術後1~2年で再発する可能性が高くなります。現在全国的な外科療法の5年生存率(他の病気での死亡も含む)は進行度Ⅰ期77% Ⅱ期60% Ⅲ期39% IV期24%程度と報告されています。
進行度IV期の切除不能進行食道がんや術後に再発を来した食道がんの患者様には、がん細胞の病勢を抑えることで治癒を目指したり、予後を延長させるような化学療法(抗がん剤)や放射線治療を行うのが一般的な標準治療とされています。
がん細胞を直接攻撃するような抗がん剤(5-FU、シスプラチン、ドセタキセル)や免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、イピリムマブ)などを病状の進行具合やお身体の状態に応じて、治療ガイドラインに基づいた治療方針とご本人のご意向に沿った治療を相談して決めていきます。当科では術前化学療法や化学放射線療法と鏡視下手術(コンバージョン手術)を組み合わせて行うことで、遺残のない切除を行うことにより根治を目指す取り組みを行っています。
胃がんの治療について
胃がんとは?
60代以上の高齢者で男女比は約5:1と男性に多く,わが国では毎年約9,000人が食道がんにかかります。食道がんの発生要因としては、飲酒や喫煙、辛い飲食物の嗜好などが密接に関連するといわれています。解剖学的にリンパ節転移や隣接臓器(大動脈、気管支、肺など)への浸潤を起こしやすいことから、食道癌は胃癌や大腸癌などと比べるときわめて予後の悪い癌です。
胃がんの病期(ステ−ジ)
胃癌治療ガイドライン第6版(2021年)わが国では「胃癌取扱い規約」に基づいて、腫瘍の深さ(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔臓器や腹膜、所属外リンパ節への転移の有無(M因子)に基づいて、がんの進行度を病期分類しています。この進行度に基づいて治療アルゴリズムに則った標準的な治療を中心に患者様に提供しています。
胃がんに対する各病期別治療法
我が国での胃がん治療では手術が中心的な役割を果たしており、リンパ節郭清を伴う胃切除術が標準的手術とされています。従来開腹手術腕行われてきた胃切除術は近年腹腔鏡手術やロボット手術により身体に与える負担を軽減させつつ根治が見込める手術療法が提供できるようになっています。これにより手術による合併症の発生や死亡率は著しく減少しました。また手術の前後に再発を予防する目的で化学療法(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤)を併用した集学的治療を行うことで、さらなる治療成績の向上を目指す取り組みを行っています。また早期胃癌では内視鏡的切除により治癒することも期待できます。患者様の病状の進行具合や全身状態などに応じて最も適した治療法を一緒に相談した上で決めていくことになります。
手術療法
腹腔鏡下胃切除、リンパ節郭清(ロボット支援腹腔鏡下胃切除)
腹腔鏡もしくはロボット支援手術システムを用いて胃と腹部のリンパ節の掃除を行う方法です。腹部に5~6箇所の小孔をあけ、この小孔から内視鏡や手術器具、ロボット鉗子などを挿入してモニター画面を見ながら手術を行います。開腹手術と比べて傷が小さいため、術後の創痛が少なく、術後の全身状態回復に大きな利点があります。当院では2018年以降ロボット支援下腹腔鏡下胃切除術を保険診療として施行しています。進行した胃癌の場合には根治性を保つために開腹手術による治療が標準治療であり、根治性と低侵襲性のバランスを考慮した治療法・術式の選択を行います。
胃がんの根治手術としての術式には以下のようなものがあります。
System
・幽門側胃切除術・・・胃の下部2/3程度の切除
・噴門側胃切除術・・・胃の上部半分程度の切除
・胃全摘術・・・胃をすべて切除
・胃部分切除術・・・腫瘍を周囲とともに部分的に切除
・機能温存手術、縮小手術・・・食事摂取や栄養状態の維持を目的として、根治性とのバランスを考慮した術式です。定型的な手術ではなく、リンパ節郭清の工夫としてセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)生検を行った上での縮小手術にも取り組んでいます。
胃切除の術式
化学療法・免疫療法
切除不能進行胃がんや術後に再発を来した胃がんの患者様には、がん細胞の病勢を抑えることで治癒を目指したり、予後を延長させるような化学療法(抗がん剤)を行うのが標準治療とされています。がん細胞を直接攻撃するような抗がん剤(S-1、オキサリプラチン、5-FU、シスプラチン、レボホリナート、ドセタキセル、パクリタキセル、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、イリノテカン、など)や分子標的治療薬(トラスツズマブ、ラムシルマブ、トラスツズマブデルクステカン、など)、免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ)などを病状の進行具合や身体の状態に応じて、治療ガイドラインに基づきご本人のご意向に沿った治療方針を相談して決めていきます。当科では化学療法による様々な有害事象(副作用:下痢や吐き気、食欲不振、免疫機能の低下、皮疹や肌荒れ、腎機能障害や肝機能障害、電解質異常やホルモン異常など)に対する予防策や発症後の治療とフォローを行うことで、化学療法の安全な継続と有効性の向上、生活の質(Quality of Life:QOL)の維持を目指しています。また、化学療法に伴う栄養状態の悪化や筋肉の衰えを抑制するために、消化管機能と病態に応じた栄養療法(濃厚流動食の提供、経鼻栄養カテーテル挿入、消化管ステント留置、消化管バイパス手術、中心静脈ポートを用いた高カロリー輸液、など)を、医師、管理栄養士や看護師、薬剤師などにより構成される栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)と協力して行っていきます。